ハリエットのはなし







「なぁーつーさぁー」



ハリエットが私の名前を呼ぶ。



そんなときの用事は約2種類。

にんにくちょーだい。マッチかしてー。トマトあるー?

の、ちょーだい系。で、もう一つが、あげる系。

とうもろこしあげるー。おいもあげるー。



で、今日は、嬉しいフェネあげるー。だった。フェネは、ジャックフルーツ。


で、部屋から出て、ドアのところに座ってフェネを食べる。

どっかから入ってきたニワトリがぴよぴよと水たまりの水を飲むのを眺めながら。


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ニワトリが自然にどこでも歩いてるなんて日本じゃありえんなーと思いながら

(山羊も牛もそこらじゅうのんびり歩いてる。やぎもたまに入ってくる。

牛はさすがには行ってこれないみたい)




ハリエットを見ると、赤ちゃん抱きながらハリエットもそのニワトリをぼけーっと眺めてた。



それ見たら、なんてのんびり平和な時間なんだろうって笑ってしまった。



ハリエットが「チチェチョ・エンココ」って言う。

エンココはニワトリ。

チチェチョは、飲んでるってことかなぁ~?

と思ってたら、チチェチョは「あれなに?」という意味らしく、

「あれはなに? ニワトリ。」って言ってたみたい。それが分かったら、なんだかまたおもしろくなってきた。

チチェチョ、エンココ。自問自答。




これを書いてたら

ほらきた!


「なぁーつーさぁー」

「ユーブリング マイ チャコー」

ちょーだい系。

英語の苦手なハリエットのこの言葉の解説は、「チャコール(炭)ちょうだーい」


私がここに住むようになってから

もう一人の住人ヘレンが言った言葉が忘れられない。



「ここに住む私たちは一つの家族よ」って。



だから、足りないモノがあれば、私があげる。

私が足りないモノは、ハリエットやヘレンにもらう。

まぁだいたいハリエットが、ちょーだい系で「なぁーつーさぁー」って呼ぶんだけどね。


他の隊員とかは、一軒家のいいお家に住んでたり

もっとプライベートなかんじのお家だったりする。


でも私は、この共同生活の長屋のお家がけっこう好き。

(もちろんマイナス面もたくさんありますが・・・)



一緒に暮らしているみんなのことが大好きだし

料理の仕方もシャワー(水浴び)の仕方も掃除の仕方も一日の過ごし方も

全部教えてもらえるし

寂しくなったら外に出れば、ハリエットがいつも料理してる。


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私ね

ハリエットの事が大好きなんだ。


ここで暮らしていて、私はみんなが持っていないモノをたくさん持っている。

パソコン、カメラ、電子辞書、日本の本、とか、なんかいろいろ。

特にハイテクなモノ!

そして私は、それらをなるべくハリエットに見せないようにしている。


ハリエットは、私にとってすごく魅力的な女性で、

優しくて素直でとってもかわいくて。

そして、ピュアすぎるくらいにピュア。


だから私がもっているハイテクなモノを見ると、ハリエットにとっては産まれて始めてみるモノのように(実際にそうなんだとおもうけど)すごい驚き方をする。


チャコールストーブ(炭火)の火の付け方を教えてもらったときに

火をつける道具として私がライターを持ってきた。

ハリエットは不思議そうにそれなに?って眺めて

私が火をつけると

すごい驚いて

「そんなの無理無理!!」ってすごく驚いて、マッチはないの??という動作をする。


日本風に野菜炒めを作って少しお裾分けしただけで

変なモノを食べるかのように恐る恐るそれを口に入れて、「だめー!」と大爆笑。


日本からの「うまい棒」が手には入って

それを一口分切ってハリエットにあげたら

恐ろしそうに口に入れて

ものすごい顔になっていってはき出して、口をスグに水ですすいでた

きっと自然じゃないケミカルなモノがいっぱいはいってたその一口は

ハリエットにとっては刺激的すぎてまずすぎた一口だったみたい


近くにいる日本人友達が来たときに、

彼はパソコンを持ってきていて、外で自分のパソコンから音楽を流した。

私は自分のパソコンをハリエットの前で開いたことがなかったから、

ハリエットはそれを少し離れたところから

はじめは起こっているようにパソコンをにらみつけ、

それから目をぎょろぎょろしながらパソコンの中の画面を見つめていた。

「これはなに?どっか違う世界から落ちてきたもの?」みたいな感じで



私はそんなハリエットを見て、かわいいなぁ・・・、

もしハリエットを日本に連れってったら・・・って想像している。


まず、飛行機にのれるかな?

きれいなおっきい目をぎょろぎょろさせて

こんなものに乗れない!って周りをぐるぐる見渡しながら不安そうに私の腕を掴んでくるんだろうな。


機内食すら食べれるか不思議だ。

ウガンダ料理以外は見たことも食べたこともない不思議な物体のようにきっと眺めて、

恐る恐る一口食べてみておっきい目が飛び出しそうに「こんなのだめだめ!」って。


そしてきっと、

一睡もしないでおっきい目キラキラさせながら飛行機の窓から外を眺めながら日本に着くんだ。


日本に着いたら、

日本人に囲まれるハリエットは動揺して笑顔が無くなる。

アフリカの田舎から出てきたままの雰囲気と、

日本のかしこまった空港の空気とのギャップがありすぎて私はきっとおかしくなる。


一番連れて行ってみたいのは、東京の高層ビル街。


口をぽかーんと開けて、おっきい目ぎょろぎょろさせて、立ちつくしちゃうかもしれない

と・・・

妄想はこの辺でやめて・・・。


とにかくハリエットは、私たちが日常的に使っているハイテクなモノに対しての免疫が全くない。

めちゃくちゃエコでシンプルな彼女の生活は私にとって学ぶべき事が多いんだけど


もしハリエットが、「先進国」で産まれていたならば

きっとたくさんおしゃれして

おしゃれなカフェをたくさん知っていて

はやりの言葉を使って

周りの男性がたくさんよってくるような、そーんな女性になっていたかもしれない

と想像する。


でもハリエットは、ここで産まれて、ここで育った。

だからノートパソコンもライターもウガンダ料理以外の食べ物も知らないし

旦那さんには他に二人もワイフがいて

半年前に生まれの子どもをひとりで頑張って育ててる。



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私にはパソコンも洗濯機も掃除機もテレビも世界中の食べ物も世界中飛び回れる自由もあるけれど

ハリエットにはない。


大好きなハリエットだから

せめてカンパラのおいしいレストランに一緒に連れて行ってあげたいなぁ

なんて思うけど

ハリエットがもしかしたら一生知ることのできない価値観を

押し付けるのは

残酷なことなのかもしれない。


と、ここまで書いて、とくにこれといって言いたいことがあるわけじゃないので、

どうやって締めくくればいいか分からなくなりました。

ので、ハリエットの写真をのせて終わりにします、

未熟&まとまりのない文章でスミマセン!笑


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